必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「何があったのかは知りませんが、切られたのは覚えていますか? 今、その刀傷が原因で熱が出ています。毒が塗ってあった形跡はありませんでしたし、刀傷は手当てをしたので、そのあたりは安心してください。あなたが何者か知りませんが、この庵では誰もがただの患者です。暴れたりするのはご法度。ですから、今は余計なことは気にせず、身体を直すことに専念してくださいね」
 優しい声音で現状を告げられ、枕元で水音がしたかと思うと、額に冷たい手拭いが乗せられる。それが心地よくて、男は知らずホッと息をついた。
 何もわからず、身体は異常に熱い。青年が言うには刀傷もあるらしいが、身体が熱すぎて痛みは感じなかった。先程飲んだ水に薬でも交ぜられていたのか、起きたばかりだというのに思考が深く沈み込んで抗うことができない。額に張り付いた髪をかき上げた指がとかく優しくて、こんなにも身体が熱いというのに、どこか幸せな気持ちになりながら男はゆっくりと瞼を閉じた。
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