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ゆっくりと頷けば、弥生は安心したように微笑んだ。書面も何も交わすことはできない口約束であるが、それでも弥生にとって杜環の口からその言葉が出てきたことに価値があるのだろう。そんな弥生に笑みを零し、杜環は外へ視線を向けた。美しい庭の先に、青々とした空が広がっている。
「春風殿が民のため、この国の行く末を憂うように、民のためこの国を救いたいと頭を働かせ、動き回っている者もおります。春風殿の仰る通り、動き出した時代がどのような道へ進むのかわかりませんが、願うことは民の安寧と幸せ。そこに違いはありますまい。願いが同じであるならば、きっと心は通じる。そう、私は信じております」
既に暴走を起こし、その手に刀を握って未来を叫ぶ若者は多い。だが敵対関係となるだろう彼らにも、弥生の願いが変わらなければ想いは通じる。確信など何もないそれを、杜環はどうしようもなく信じたかった。
「春風殿が民のため、この国の行く末を憂うように、民のためこの国を救いたいと頭を働かせ、動き回っている者もおります。春風殿の仰る通り、動き出した時代がどのような道へ進むのかわかりませんが、願うことは民の安寧と幸せ。そこに違いはありますまい。願いが同じであるならば、きっと心は通じる。そう、私は信じております」
既に暴走を起こし、その手に刀を握って未来を叫ぶ若者は多い。だが敵対関係となるだろう彼らにも、弥生の願いが変わらなければ想いは通じる。確信など何もないそれを、杜環はどうしようもなく信じたかった。
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