必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「昨今の情勢を見るに、先の事を憂いているのです」
 茂秋が将軍位に就くより前から、不穏な空気が漂っている。それを感じ取ることのできていない日和見な近臣もいるが、弥生はそうではなかった。当然、茂秋も感じている。感じているからこそ、今の彼に余裕など無いのだろう。
「衛府を潰してくれるな、尊皇主権を諦めるよう峰藤から華都に申し上げろと?」
 衛府には峰藤出身の大御上がいる。今は亡き藩主が大切にした姫がいるというだけで、峰藤は衛府側につく理由になるだろう。領主の右腕たる杜環はある程度自由に峰藤を動かすことができる。だから、杜環の裁量で衛府に味方しろと願うのか。そう目を細める杜環に、しかし弥生は苦笑しながらゆっくりと首を横に振った。
「私の願いで峰藤を動かすことはできない。流石に、それは理解しているつもりですよ。杜環殿の立場もわかっているつもりです。もちろん、峰藤が衛府についてくださるならこれ以上ない喜びになりましょうが、流石に、それを強要はできません。まして大御上様を理由に迫るは、一介の武官としてあまりに恥ずべきこと。やたら刀を振り回す時代ではなくなりましたが、それでもその心は忘れてなどおりません」
 峰藤には峰藤の考えがある。それに、時代が動くというのならば、人は抗うことなどできない。
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