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「では、私たちはこれで。もう薬は持ってきませんから安心してください。縁を潰したということは、娘さんをあの近臣の元へ送り出したかったのですよね? 男が肌を晒すのは気持ち悪くて、女人は気持ち悪いと嫌悪しないのかと少々疑問には思いますが、私のせいで縁が潰れてしまったというのであれば申し訳ないですから、あの方に取り成してもらえるよう尽力するくらいはいたしましょう」
雪也の顧客には近臣たちに直に会うことの出来る者も、そう多くはないが存在する。責められるかもしれないが、できるだけのことはしようと雪也は頷いた。
「もっとも、あの屋敷では彼以外、心も自由も、持つことは許されませんが」
ただの人形だ。そう告げる雪也に、多恵が「ひ――ッッ」と引きつった悲鳴を上げた。取り成しなんてやめてくれと、何度も何度も首を横に振って縋るように願う。それを見て、「ならば、もう私は何もしないでいましょう」と雪也は応えた。ホッと息をつく多恵に、末子は苦虫を何匹も噛み潰したような顔をする。それを視界におさめた雪也は周の方に手を回して促しながら踵を返した。
雪也の顧客には近臣たちに直に会うことの出来る者も、そう多くはないが存在する。責められるかもしれないが、できるだけのことはしようと雪也は頷いた。
「もっとも、あの屋敷では彼以外、心も自由も、持つことは許されませんが」
ただの人形だ。そう告げる雪也に、多恵が「ひ――ッッ」と引きつった悲鳴を上げた。取り成しなんてやめてくれと、何度も何度も首を横に振って縋るように願う。それを見て、「ならば、もう私は何もしないでいましょう」と雪也は応えた。ホッと息をつく多恵に、末子は苦虫を何匹も噛み潰したような顔をする。それを視界におさめた雪也は周の方に手を回して促しながら踵を返した。
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