必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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(ねぇ、雪也。きっと俺と雪也はそんなに変わらないって、雪也はわかってるのかな)
 生きる為に、受け入れざるを得なかった。ただ耐えることしか許されなかった。雪也にとっての弥生が、周にとっての雪也が現れ手を差し伸べるまで、差し伸ばされた手は一つもない。耐えるべきが雪也は色で、周は暴力だった。ただそれだけの違いでしかない。どちらも苦しくて、辛くて、逃げ出したくて、けれど逃げ出すという選択肢すら与えられなかった。周も雪也も、望んでそんな環境にいたわけではない。まさしく、奈落の底に突き落とされたのだ。他の誰でもない、大人の手で。そんな、自分を救う術すら持たない小さな子供を、大人は〝ご高説〟を垂れて、これでもかと打ち付ける。子供が――子供だった者がただ耐えるだけだとわかれば嬉々として更に打ち、蹴り、泥を投げ、そして笑うのだ。自分はとても綺麗な存在だと声高に叫び、断罪してやったと。
 誰も庇わない。これほどまでに人の目があるというのに、雪也に駆け寄ったのは周一人だ。あれほどまでに雪也雪也と名を呼び、雪也が良くした者達も多いというのに、ただ遠巻きに見るだけだ。それがこの世の常と、周も雪也もわかっている。それに傷つく心は、とうに無くなった。
 けれど――。
「ただ必死に生きてきただけの雪也に、何にもしないあなたが言えることなんてない」
 だからこそ、周は雪也の前に立つ。誰も庇わないなら、周が立つのだ。
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