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「手を差し伸べられないことを、俺は責めない。雪也もきっと、責めない。出来ない現実を、誰よりも知ってるから。でも、助けないなら、手を差し伸べないのなら、あなたに雪也を責める権利も、過去を汚いものだと叫ぶ権利も、ありはしない。その場所で生きることしかできなかった子供を、助けもしない大人が〝汚らわしい〟と大声で言うなんて、あなたはよほど偉い人なんだね」
 終わった後に、遠くから綺麗ごとを言うだけなら、いくらでもできるだろう。ああすれば良かった、こうすれば良かった、そんな実現不可能な夢物語を言うならまだマシであるが、それすらもせず、ただ汚らわしいだの気色の悪いだのと罵ることは許されない。
 周、と雪也がか細い声で名を呼び、周を庇おうとするかのように袖を引っ張る。その手が微かに震えていることを、雪也は自分で気づいているのだろうか。
 雪也は周が子供だから、自分が庇って、助けて、守ってやらなければいけないと思っているのだろう。こんなにも手を震わせているというのに、未だ周を庇い守ろうとしている。誰よりも助け、守られるべきはこの場において雪也であるはずなのに、雪也の中にそんな考えはない。
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