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 周の叫びに、末子の罵声も、まわりの騒めきもピタリと止まる。シンと静まり返ったその場に、周の声はひどく響いた。しかし怒りに我を忘れかけている周は、そんなまわりの沈黙には気づかず、雪也を傷つけ続ける末子と、己の母親を止めきることもできない多恵を睨み続けている。
「なッ……、あ、あんたは子供だから意味がわかってないんだッ。だから平気でそんなことが言えるんだよ。これは大人の話だ。わからない子供がしゃしゃり出てくるんじゃないよッ!」
 男娼がどんな存在か、未だ子供である周にはわからない。そうである以上、雪也が過去に何をして生きてきたのか、なぜ汚らわしいと言われるのか、周には何もわからないだろう。だからこんなにも純粋な瞳で雪也を庇うことができるのだ。そう叫んだ末子に、周はどこか凪いだ瞳を向けた。
「知ってる、それくらい」
 静かに零された言葉は、俄かに信じがたい。疑わしそうにねめつけ、何かを言おうとした末子を遮るように、周は続けた。
「子供だから、知らないと思ってるのは大人の傲慢。言ったって意味なんか分からないと思って、大人は平気でペラペラ喋るけど、そんなことを続けられれば嫌でもわかる。雪也が助けてくれる前は、そういう場所に居た。子供は知らないと大人が思ってるから、知らないフリをするだけ」
 周は確かに子供だ。見た目も、年齢も。だが、何も知らないわけではない。
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