必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「お多恵といったか、そこの女子が少しばかりお前に似ていたからなぁ、よい遊び相手になるかと思うて側室になるかと話をしたが、まさかその女子の家にお前がいるとは想像もしなかった。どうじゃ? また私の元へ来るか? お前が自分の意志で来るのであれば、春風家も何も言えまい。お前が来るならまたあの時のように、ねんごろに可愛がってやろうほどに」
 雪也の髪を掴んだまま、ネットリと雪也の腰に手を這わせた松中に、ハッとして雪也は飛び退く。バクバクとうるさく心臓が跳ねるが、今はそれに構っている暇はない。
「いいえ行きません。私はもう、あなたの人形ではないのです」
 すべてを諦め、ただ耐え忍ぶばかりだった、松中お気に入りの人形ではない。弥生たちによって自由を、意志を与えられた人間だ。
 あの頃にはなかった、瞳の中に光る意志を見て、松中は苛立たし気に鼻を鳴らした。雪也に反抗されたことに腸が煮えくり返っているのだろうが、やはり春風を敵に回したくはないのだろう、特に無理矢理手を伸ばすこともなく、松中は踵を返す。
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