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「大局を前にこんなことを言うのもどうかとは思うけど、それでも僕は〝仕方がなかった〟と言おうかな。僕がわかっているんだ。弥生だって、わかっているはず。上様はお若すぎるし、ある意味で四面楚歌だ。華都側としては当然の行動かもしれないけれど、尊皇派である三草 芳次殿を上様よりも華都が重んじれば、かつて将軍位を争った上様としては当然良い気などしない。それをわかっていながら、華都は追い打ちをかけるように親密な様子を上様に見せつけた。そこに意味がないなど、あり得ない。――弥生、事は起こってしまった。なら、もう元には戻らない。起こってしまったすべてを無かったことには出来ない。だから、〝仕方がない〟と諦めないと」
 優しい声音で、優は言い含めた。優よりも大局を見るに長けている弥生だ。言わずともわかっている。優の言う通り、すべては〝仕方がない〟と諦めなければならないと。だが過去を振り返り後悔することこそないが、先を思えば憂いは消えない。他の誰でもない、茂秋の手で賽は投げられた。
「些細なことで叱責し、芳次殿を会合から追い出すなど短慮に過ぎる。事と次第によっては、大御上様たちの意見も必要になってくるだろう。もしかしたらお前に城へ走ってもらわなければならなくなる」
「良いよ。そんなことは気にしなくて良い。万が一のことを考えて、紫呉はここに残しておいた方が良いだろうからね」
 すべてを言わずとも読み取ってくれる優の存在が、今はありがたい。弥生は少しだけ微笑んで、子供のように優の膝に頬を摺り寄せた。
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