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「優、私を含めて、衛府の誰もが読み間違えてしまったようだ。華都はずっと、この隙を狙っていた」
 衛府が開かれてより、約二百年。ずっと、ずっとこの時を彼らは待っていたのだろう。息をひそめて。
「〝華衛合体〟、そう唱え続けて此度、姫宮様の降嫁が実現した。傾いている衛府の権威を立て直し、この国を導くに足る力を、武力を使わず平和的に得ようと。そして同じように、華都でも〝華衛合体〟の声があちこちで上がっていた。摂家たちが帝に何度も訴えまでして、華衛合体のため姫宮様を茂秋公にと。だが、華都の言う〝華衛合体〟は全き尊皇のため。今度こそ、すべての政を行う権利を華都に取り戻さんとするためだ。それが今回ことこで痛いほどわかった。彼らはもう、容赦などしない。今こそが千載一遇の好機だ。そしてその大きな波を受け止め、抗うには、上様は――」
 ――若すぎる。
 意図的に呑み込んだ弥生の言葉を、優は正確に理解していた。まだ二十と三年ほどしか生きていない年若い将軍には、荷が重すぎるだろう。まして尊皇に燃える華都側と違い、衛府は決して一枚岩ではない。長く権威を光らせていたが故の代償。光が強く大きいほど、影もまた大きく、濃い。
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