必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 あまり良いとは言えんな……。
 頭痛を耐えるように指で眉間を揉みながら、弥生は与えられた自室で深い深いため息をついた。それでもなんとか父にあてる文を書き終え、少し乱雑な動きで筆を置く。
「そんなに悩んでたら頭が爆発してしまうよ」
 根本原因を取り除くことが出来ない以上、気休め程度にしかならないが、優は薬包と水の入った湯のみを乗せた盆を差し出す。それを無言で受け取った弥生は、やはり小さくため息をついて薬を呷った。そんな弥生に苦笑して、弥生の側にゆったりと座った優は、弥生に横になるよう促す。
「……ただただ清く、優しく、負の感情を持たぬ者など存在せぬとはわかっているが、私は無意識のうちに、上様にそのあり得ぬ存在であってほしいと願っていたのだろうか」
 女の柔らかさなど、どこにも無いというのに、何よりも安心する優の膝に頭を預けて弥生は瞼を閉じたままポツリと零す。普段であればそれなりに何でも受け入れる弥生であるが、今日起こったそれらを受け入れるには、少し時間がかかるようだ。
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