必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「でも、あの女の人が付いて行くって言ったら、また出てこなくなるんじゃ……」
 女主人はお気に入りが離れたり飽きたりすれば、こうして探しに来ると言った。ならば新たなお気に入りが出来れば、少なくとも数か月はこうして女を漁るような真似をしないのではないか? そう考えると、この数日は大臣の方が誘いを断られているという状況なのだろうか。
 しかし、周の考えを聞いた女主人は呆れたように首を横に振った。
「前まではそうだったんだけどねぇ。何があったのか知らないけど、近頃はそうでもないんだよ。ほら、見てごらん。まただよ」
 促されて視線を籠に戻せば、女が頷いたにも関わらず、籠は女を無視して進んで行ってしまった。そこにはポツンと、何が起こったのかわからないと混乱している女が取り残されている。
「最近はずっと、あんな感じなんだよ。ご自分で誘ってるくせに、女の方がついて行くって言った瞬間に伸ばしていた手を引っ込めるのさ。なら頷かない方が良いかって、どんな方法でも良いから気に入られたいって奴は、わざと嫌だ行かないって言ってみるんだけどね、それもすげなく振って、誰も連れて行かずに去っちまうのさ。まったく、ただ誘うことが楽しくて遊んでるのか、それとも腐ってもお大臣だからね、女の浅知恵なんてお見通しなのかわからないけど、毎回毎回迷惑な話だよ」
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