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「いえ、何も問題はありません。白湯が必要なのですね? すぐに持ってこさせましょう。他に何か必要なものはありますか?」
 いかに金を払うとはいえ、薬を煎じてくれるのは雪也だ。白湯が必要ならば指示ひとつすればよいというのに、まさか自分で湯を沸かそうとするとは思わず固まってしまった男であったが、すぐに気を取り直して首を横に振ると必要なものがあれば一度に用意させようと尋ねる。少し考えた雪也は小さな火鉢と水の入ったやかんを頼んだ。男は襖を少し開けてすべてを持ってくるよう告げると、再び静かに襖を閉じる。
「少しお待ちを。……父の容態はどうでしょう? 咳を止めることはできますか?」
 男が視線を向けると、雪也はチラと老人を見て、「おそらく」と頷いた。その応えに男と、静かに見守っていた蒼の父がホッと息をつく。
「季節柄仕方がないのですが、乾燥していると咳は出やすくなりますし、止めようと焦れば焦るほど咳は続きますから。火鉢であれば煙も出ませんからそれで湯を沸かして湯気で空気を湿らせて、身体を、特に首元を温めてくださいね。あと、咳止めの薬を少し持ってきましたから、白湯が来たらそれで飲んでください。あ、咳が出ている時は水ではなく白湯でお願いしますね」
 今すぐに完璧に治すことはできないが、それでも症状を緩和させて数日後に完治させることはできるだろう。
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