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「何悩んでんのか知らねぇけどよ、んな顔してたら誰も騙せねぇぞ。どうしたって自分で解決できねぇなら、誰かに相談した方が良い」
 俺でも良いなら聞くぞ、と言う紫呉に、由弦は再び俯いた。
 紫呉のこれは全き善意だ。だけど、そんな彼に雪也への態度に嫉妬しましたなんて言えない。けれど確かに、由弦一人で抱えていたところで解決策が見つかるとも思えず、この感情を忘れるなんてある種の器用さも持ち合わせていないのは流石にわかる。
 紫呉は、何も言わず鳥を捌いている。由弦が口を開くのを待っているようだ。どうしようかと視線を彷徨わせ、由弦はギュッと袴を握りしめた。
「あ、あのさ……」
 口を開けば、紫呉がゆっくりと視線を向けてくる。その優しい眼差しから逃げるように、もっと深く由弦は俯いた。
「あの……と、友達のことなんだけどさ……」
 咄嗟に口に出たのは、小さな嘘。けれど、そうすれば素直に胸の内を吐露できるような気がして、由弦は今度は意図的に嘘をついた。
「友達が、相談してきたことなんだけどさ……」
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