必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 由弦は紫呉にはもちろんであるが、雪也や周に対しても心の底から感謝していた。彼らが由弦とサクラをこの庵に受け入れてくれなければ、今のような穏やかで、空腹に苛まれることのない生活を送ることはできなかっただろう。あの地獄から救って、受け入れてくれた彼らには返しきれぬほどの恩がある。だというのに、夜中に紫呉が雪也の髪を撫でようとしたのがわかった瞬間、自分は確かに〝嫌だ〟と思った。紫呉が弟のように雪也を可愛がっていて、由弦は理由を知らないけれど、きっと雪也にはその優しさが生きる為に必要なのだろうとわかっていたのに、それでも由弦は紫呉が雪也や周の頭を撫でることが嫌だと感じた。自分以外に、そんなことしないでと。なんとも器の小さい、自分勝手な感情を抱いた己に驚き、そして胸を掻きむしりたいほどに嫌悪した。
(雪也も周も、良い奴なのに)
 由弦とサクラに居場所をくれた、慈悲の塊と言っても過言ではないほどに良い人だ。彼らが由弦やサクラを邪険にしたことは一度もなく、由弦に辛い態度をとったこともない。だというのに、自分は嫉妬した。――そう、嫉妬したのだ。紫呉から温もりを与えられる二人に、羨ましいと。
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