必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 いつ雪也が帰ってきても大丈夫なように、布団を被り寝たふりをしながら、周はあれこれと様々なことを考えていた。
 こう雪也の服薬が続けば、あの薬が何の効能を持っているのか何も知識が無い周でも、何となくはわかる。雪也がそれを必要だと思って服用しているのなら、それを止める気も無い。ただ考えれば考えるほど周の胸の内に淀んだ霧が現れて、ひどくグチャグチャにかき回されるような気がした。
 胸の内に巣食う何かを必死で抑え込んでいれば、カタッと小さく音が鳴って周は慌てて瞼から力を抜き、わざとらしくない程度に寝息を零す。足音を立てず戻って来た雪也はそんな周がまさか起きているとは思わなかったのだろう、特に何をするでもなく布団に横たわったようだった。
 しばらくして、ほんの微かに雪也の寝息が聞こえる。それでもしばらく待って、雪也が完全に眠っていることを確認してから、ゆっくりと起き上がる。そして雪也や由弦を起こさぬよう歩けば、眠っていたサクラがムクリと顔を上げたが、慌てて唇に人差し指を当てて、お願い、静かにと無言で懇願する。それが通じたのかサクラは〝やれやれ〟というかのように再び眠りについた。それにホッとして、周は雪也の顔を見つめる。
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