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「紫呉さんの前だと俺らも子供だなぁ。多分二人で行っても紫呉さんは片手でどうにかできそう」
 それはただの例えであったのだが、由弦は勢いよく湊を振り返ると真剣な顔をして首を横に振った。
「ダメだって! 一対二とか卑怯だから!」
「そこ?」
 由弦からすれば、いくら紫呉が強くても正々堂々勝負すべきで、一対二などあり得ない。当たり前だろうと断言する由弦に、湊は苦笑した。
「ま、由弦のそういうところ好きだけどね」
 いっそ潔癖なほどに真っ直ぐで、誰に対しても平等。その明るさも相まって、まるで太陽のようだと湊は思う。彼の側は、とても明るい。だから思いそのままに口にすれば、由弦は照れるどころかニカッと笑った。
「俺も湊のこと好き!」
 それは誰が聞いても〝友として〟好きという言葉だった。湊も友として言ったのだから、その返事に嬉しさはあれど、その他の感情など芽生えない。だが、ふと気が付いてチラと視線を向ければ、紫呉は先程までの不敵な笑みを消し、どこか複雑そうに苦笑していた。あからさまなその姿に、湊はクスリと小さく笑う。彼も不憫なことだ。
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