必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「なんでもかんでもお前に任せていては、いつか私はお前無しでは生きていけなくなりそうだ。離してやれなくなるぞ」
 優が己を好いているのだという確信は、弥生の中にもある。それは自惚れでもなんでもないだろう。だが、それでも弥生はどこかで一線を引いていた。
 優は弥生を好きだと言うが、男色であるとは聞いたことが無い。いつか自分の子供が欲しいと思う時が来るかもしれない。それは人としての本能であるのだから仕方のないことだと、弥生はどこか冷めた目で理解していた。だが優は、そんな弥生の冷めた部分さえも知っていながら、ゆっくりと背中から弥生を抱きしめる。
「それは願ったり叶ったりだね。弥生が僕に依存してくれればいいのにって、常日頃から思ってるよ」
「常日頃は恐ろしすぎる」
 優の甘く蕩けるような声音にも弥生はいつもの調子で、一部始終を見ていた蒼はクスリと笑う。相変わらず仲が良いな~、と胸の内で呟けば、また水面に雫が落とされたかのような錯覚に陥った。
(さっきから変なの~)
 不快ではあるものの、何か問題があるわけでもない。だから蒼は見ないフリをして、器用に林檎の皮をスルスルと剥き始めた。
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