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「もっと食べさせてあげたいね~ってことだよ」
「由弦にもな」
「湊もよく食べるからね」
まるで用意していたかのようにスラスラと言う三人に雪也は訝しむが、探るにはどうでも良い事だろうと諦め、首を竦める。周に袖を引っ張られ、彼に向き直った。
「あぁ、ごめん。こっちも切っちゃ――」
「もっと手加減しろよおぉおぉおぉおぉおぉおぉぉぉぉぉッッ」
雪也の言葉をかき消すように、外から由弦の叫び声が聞こえ、雪也と周はビクリと肩を震わせる。そんな二人の様子など知る由もない湊の笑い声が聞こえ、庵の中にいた全員が思わず扉の方へ視線を向けた。
何事かと首を傾げれば、今度は湊の叫び声が聞こえる。大声ではあるものの、どこか楽しそうなので危険は感じないが、一応様子は見ておこうかと雪也が扉を少し開けて外を覗き見た。そして無言で扉を閉めた。
まるで何も見ていませんと言わんばかりの雪也に周は首を傾げる。
「何があった?」
もしかしてよからぬことがあったのかと不安に思うが、外からは未だに楽しそうなはしゃぎ声が聞こえている。非常に楽しそうに聞こえるが、そうでもないのだろうか?
混乱していつもより多く瞬きを繰り返す周に、雪也は己を落ち着けるよう小さく息をついて笑みを浮かべた。
「由弦にもな」
「湊もよく食べるからね」
まるで用意していたかのようにスラスラと言う三人に雪也は訝しむが、探るにはどうでも良い事だろうと諦め、首を竦める。周に袖を引っ張られ、彼に向き直った。
「あぁ、ごめん。こっちも切っちゃ――」
「もっと手加減しろよおぉおぉおぉおぉおぉおぉぉぉぉぉッッ」
雪也の言葉をかき消すように、外から由弦の叫び声が聞こえ、雪也と周はビクリと肩を震わせる。そんな二人の様子など知る由もない湊の笑い声が聞こえ、庵の中にいた全員が思わず扉の方へ視線を向けた。
何事かと首を傾げれば、今度は湊の叫び声が聞こえる。大声ではあるものの、どこか楽しそうなので危険は感じないが、一応様子は見ておこうかと雪也が扉を少し開けて外を覗き見た。そして無言で扉を閉めた。
まるで何も見ていませんと言わんばかりの雪也に周は首を傾げる。
「何があった?」
もしかしてよからぬことがあったのかと不安に思うが、外からは未だに楽しそうなはしゃぎ声が聞こえている。非常に楽しそうに聞こえるが、そうでもないのだろうか?
混乱していつもより多く瞬きを繰り返す周に、雪也は己を落ち着けるよう小さく息をついて笑みを浮かべた。
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