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本来であれば、確信の無いことをいち町人である蒼に対して近臣である弥生が口にすることは憚られる。だが、弥生もまた人の子だ。わかっていても、情は断てない。
詳しいことはわからないが、それでも自分たちの為に弥生が近臣としては過ぎたことをしているとわかっているのだろう、蒼は笑みを浮かべながら小さく頭を垂れた。
「気をつけます。噂によれば、もうじき将軍様が西にある倖玖(こうく)に行かれるとか」
それはたとえおひざ元である城下町であったとしても、あまり関りの無いことだ。また行列が通るのかな? と、それくらいの認識でしかない。だが蒼の中でなんとも言えぬ違和感が渦巻く。それを見せぬよう、蒼はいつものようにニコニコと笑った。
「もしも将軍様について行かれるなら、安心してくださいね~。雪ちゃんのことも周のことも、由弦もサクラちゃんも、ちゃんと見ていますから。ご飯もバッチリ食べさせておきますよ~」
ニコニコと、先程までとは違い隠すことのない音量で言う。その言葉に振り向いた雪也は首を傾げながらも苦笑していた。
「もしかして、まだご飯のこと言ってますか?」
ちゃんと食べてるって言ったのに、と眉を下げる雪也に、弥生も優も蒼も首を横に振る。
詳しいことはわからないが、それでも自分たちの為に弥生が近臣としては過ぎたことをしているとわかっているのだろう、蒼は笑みを浮かべながら小さく頭を垂れた。
「気をつけます。噂によれば、もうじき将軍様が西にある倖玖(こうく)に行かれるとか」
それはたとえおひざ元である城下町であったとしても、あまり関りの無いことだ。また行列が通るのかな? と、それくらいの認識でしかない。だが蒼の中でなんとも言えぬ違和感が渦巻く。それを見せぬよう、蒼はいつものようにニコニコと笑った。
「もしも将軍様について行かれるなら、安心してくださいね~。雪ちゃんのことも周のことも、由弦もサクラちゃんも、ちゃんと見ていますから。ご飯もバッチリ食べさせておきますよ~」
ニコニコと、先程までとは違い隠すことのない音量で言う。その言葉に振り向いた雪也は首を傾げながらも苦笑していた。
「もしかして、まだご飯のこと言ってますか?」
ちゃんと食べてるって言ったのに、と眉を下げる雪也に、弥生も優も蒼も首を横に振る。
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