必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「私に物事を捻じ曲げる力は無い。ただそこにある真実を見つけ、しかるべきところに報告するという義務を果たしたまでのこと。例え奴が全てに気づき吠えたとしても、私には関係のないことだ。すべての原因は、あの男のこれまでの行いであって、私ではない」
 雪也達を危険な目に合わせ、弥生たちは知らないことになっているが、雪也はそのことで過去を思い出し苦しんでいる。それだけで弥生としては男を恨む理由になるが、弥生が全面的に表に立ち糾弾するには、近臣という立場は危険すぎる。
 愛しさを前面に出すのが優しさではない。権力を振りかざすのが守ることではない。
(特に、今の時代はな)
 今も武衛城は変わらず悠然と建っているが、衛府の力はそうとも言えない。じわりじわりと、大きなうねりが衛府を狙い近づいてきていることを、僅かな近臣や将軍である茂秋は感じ取っていた。
「時に蒼、お前の店は城下町にある領主の邸宅にも出入りしていたな。確たる証拠は無いが、峰藤藩邸に行く時は少し気をつけた方が良いだろう」
 幕府を快く思っていない者は多くいる。その最たるものは天皇が座する御所だろう。だが、その次は、と問われれば、弥生は真っ先に峰藤を思い浮かべる。
 峰藤は茂秋の義母である大御上に縁のある地だ。そのため安心している近臣も多いが、弥生はかの地に住まう猛者たちの気性の粗さを思えば楽観視はできない。
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