177 / 714
176
しおりを挟む
「邪魔するぞ、周。適当に持ってきたが、今日の献立に使えそうか?」
中に入ってすぐ、手際よく野菜を切っている周に声をかける。振り向いた周に風呂敷の中を見せれば、彼はほんのわずかに口元を緩ませ、ひとつ頷いた。
「たくさん食べられるから、由弦も喜ぶ。雪也は、あんまり食べてくれないけど」
ポツリと呟かれたそれに全員の視線が雪也に向けられる。雪也は小さく苦笑しながら肩を竦めた。
「ちゃんと食べてますよ。由弦が良く食べるので、僕が少なく見えるだけです。食べる量は変わってません」
「のわりには痩せたみたいだけどね」
容赦なく逃げ場を無くそうとする優であったが、良い意味でも悪い意味でも彼らに慣れている雪也は臆するでもなく「本当ですって」と誤魔化し続けた。その様子にムッとしながらも周は俯く。
雪也は周をまだまだ子供だと思っているのか、周が何を言っても受け止めてはくれるが、のらりくらりと躱して改善しようとはしない。それが周に迷惑がかかるものでもないから強くも言えなくて、それでも心配だからと雪也があまり逆らわない弥生に伝えるのだが、雪也は彼ら相手でものらりくらりと躱していくつもりのようだ。
中に入ってすぐ、手際よく野菜を切っている周に声をかける。振り向いた周に風呂敷の中を見せれば、彼はほんのわずかに口元を緩ませ、ひとつ頷いた。
「たくさん食べられるから、由弦も喜ぶ。雪也は、あんまり食べてくれないけど」
ポツリと呟かれたそれに全員の視線が雪也に向けられる。雪也は小さく苦笑しながら肩を竦めた。
「ちゃんと食べてますよ。由弦が良く食べるので、僕が少なく見えるだけです。食べる量は変わってません」
「のわりには痩せたみたいだけどね」
容赦なく逃げ場を無くそうとする優であったが、良い意味でも悪い意味でも彼らに慣れている雪也は臆するでもなく「本当ですって」と誤魔化し続けた。その様子にムッとしながらも周は俯く。
雪也は周をまだまだ子供だと思っているのか、周が何を言っても受け止めてはくれるが、のらりくらりと躱して改善しようとはしない。それが周に迷惑がかかるものでもないから強くも言えなくて、それでも心配だからと雪也があまり逆らわない弥生に伝えるのだが、雪也は彼ら相手でものらりくらりと躱していくつもりのようだ。
2
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。
彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。
だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。
どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
騎士団で一目惚れをした話
菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公
憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
今世では誰かに手を取って貰いたい
朝山みどり
BL
ノエル・レイフォードは魔力がないと言うことで、家族や使用人から蔑まれて暮らしていた。
ある日、妹のプリシラに突き飛ばされて、頭を打ち前世のことを思い出し、魔法を使えるようになった。
ただ、戦争の英雄だった前世とは持っている魔法が違っていた。
そんなある日、喧嘩した国同士で、結婚式をあげるように帝国の王妃が命令をだした。
選ばれたノエルは敵国へ旅立った。そこで待っていた男とその日のうちに婚姻した。思いがけず男は優しかった。
だが、男は翌朝、隣国との国境紛争を解決しようと家を出た。
男がいなくなった途端、ノエルは冷遇された。覚悟していたノエルは耐えられたが、とんでもないことを知らされて逃げ出した。
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる