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なんとか三人で朝食を終え、薬の調合をする雪也に買い物へ行ってくると伝えて周は外へ出た。努めて普段通りに歩いていたが、庵が見えなくなると周は走りだす。そしてすでに決めていた野菜などを手早く買い込むと、春風の屋敷へ向かった。
近臣である春風の屋敷には当たり前であるが門番がいる。何かあった時の為にと雪也に場所こそ教えられていたものの、屋敷に入ったことすらない周はどうしようかと視線を彷徨わせたが、それでも今の周だけでは雪也のすべてを守り支えられないのだと拳を握り、足を震わせながら門番へと近づいた。
「なんだ、小僧」
門番は眉間に皺を寄せて周を見下ろす。睨まれた周はビクリと肩を震わせるが、顔を上げて門番の目を見た。
「あの、優さまはいますか?」
震える唇で言う周に、門番の眉間の皺はますます深くなる。
「秋森様にお前のような子供が何用か」
見知らぬ子供が急に若君の側近の名を口にしたことに門番は不信感を抱くが、周は門番の言葉に優が今屋敷にいるのではと縋るように門番の手を掴んだ。
近臣である春風の屋敷には当たり前であるが門番がいる。何かあった時の為にと雪也に場所こそ教えられていたものの、屋敷に入ったことすらない周はどうしようかと視線を彷徨わせたが、それでも今の周だけでは雪也のすべてを守り支えられないのだと拳を握り、足を震わせながら門番へと近づいた。
「なんだ、小僧」
門番は眉間に皺を寄せて周を見下ろす。睨まれた周はビクリと肩を震わせるが、顔を上げて門番の目を見た。
「あの、優さまはいますか?」
震える唇で言う周に、門番の眉間の皺はますます深くなる。
「秋森様にお前のような子供が何用か」
見知らぬ子供が急に若君の側近の名を口にしたことに門番は不信感を抱くが、周は門番の言葉に優が今屋敷にいるのではと縋るように門番の手を掴んだ。
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