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「ん……」
「お! 起きたか? 周が飯作ってくれたぞ」
 由弦の声に雪也は何度も重たげに瞬きを繰り返す。目を擦りながらゆっくりと身体を起こした雪也は、たくさん眠ったはずなのにどこか身体が重そうだ。
(寝すぎただけ? でも……)
 寝すぎれば身体が重くなることはあるが、周としてはどうにも引っかかる。手の中にある薬包を見られないよう素早く懐に仕舞いこみ、何でもないように雪也の下へ駆け寄った。
「おはよう雪也。ご飯できてるよ」
 未だ目を擦っている雪也は、トロンとした目で周を見ると頭痛を耐えるかのように眉間に皺を寄せた。
「ごめん周。寝過ごしたね。すぐに用意してくる。ごめんね」
 寝坊して朝食の用意を周にすべて任せてしまったことに雪也は何度も謝るが、周は大丈夫だと繰り返して目を擦り続ける手をやんわりと離させた。
「雪也も疲れてんだろ? そんなに落ち込む必要ないって。それよりも、顔洗ってきて。サクラがベロンベロン舐めちゃってな、いやほんとすまん」
 えへへ、と笑うサクラを抱っこしながら由弦は苦笑し謝ると、雪也を外へ促す。雪也も頷いて顔を洗うために外へ出るが、その足取りはやはりどこかフワフワとしていた。
「雪也、風邪とかか? 特に熱くはなかったけど」
 やはり由弦も雪也の様子が少しおかしいと思うのだろう、サクラを抱っこしながら首を傾げている。それにわからないとだけ返し、周は膳を並べ始めた。
「今日は、一人で買い物行ってくるから、由弦は雪也と一緒にいて」
 やはり雪也が心配なのだろうと、由弦はその言葉を疑うことなく「任せろ!」と頷いた。

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