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「あ! 雪ちゃんと周だ。いらっしゃ~い。あれ? 雪ちゃんお客さん? 見かけない人だね~。それに、すごく可愛いの抱っこしてる」
 ニコニコと笑い、敵意の一つも見せない蒼に由弦はポカンと口を半開きにして固まる。そのため町の人たちが皆、雪也達に視線を向けていることに気づかなかった。
「弥生兄さま……というより紫呉さまかな? とりあえずあのお三方が連れて来られて、庵で一緒に住むことになった由弦と、由弦がつれていたサクラ。サクラは犬っていう動物みたい。僕も書物の絵でしか見たこと無かったけど、すごく可愛いでしょう? 周と一緒で、僕の代わりに買い物に行ってもらうこともあると思うから、よろしくね」
「へぇ~。イヌ? を初めて見たけど、すっごい可愛いね~。ちっちゃくてフワフワだ~。サクラちゃんか~。大人しくて賢い子だね!」
 可愛いべべを仕立ててもらったんだね~、とニコニコ笑いながら、躊躇いもなくサクラに手を伸ばして顎をくすぐる蒼に、サクラも気持ちが良いのか目を細めている。そんなサクラを可愛い可愛いと連呼しながら、蒼は由弦に視線を向けた。
「由弦君だね! 僕は蒼。雪ちゃんも周もよく買い物に来てくれるお得意さんなんだ~。僕は父親の手伝いで毎日店に出てるから、お野菜が必要になったらいつでも来てね。新鮮なのを用意して待ってるよ~」
「あ、あぁ。……ああ、よろしくな!」
 目の前の光景にポカンとしていた由弦も、ようやく紫呉たちが大丈夫だと言っていた言葉を実感できたのか、パァッと瞳を輝かせ、ニカッと歯を見せながら弾けるような笑顔を浮かべた。おそらくはこれが由弦の素なのだろうと思うと、雪也も嬉しくなって笑みを浮かべる。そんな雪也の優しい笑みに周も微笑み、まわりでコソコソと様子をうかがっていた者達が一斉に顔を赤らめた。そしてそのすべてを見ていた蒼があまりのわかりやすい反応にクスリと笑う。
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