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「こんな綺麗なの、何に使うんだ?」
どこぞの姫君が持っていそうな組紐に、使い方がまったく思い浮かばない由弦は組紐をあちこち角度を変えながら眺め、眉間に皺を寄せている。
「サクラに、と。それを付けていることが由弦の犬だという証になるから、もしもの事があっても酷い扱いはされないだろうと」
動物同士のいざこざはどうにもならないかもしれないが、人間に対してならば組紐は良い対策となるだろう。もしもサクラが逃げてしまったとしても、組紐があれば追い払うのではなくこの庵に連絡がくる可能性が高い。それに気づいた由弦はパッと顔を輝かせた。
「なるほど、そういう事か! そういうことなら、ありがたく貰っとく。今度紫呉と来るよな? その時に直接礼を言わないと」
今日は務めがあると言って弥生と優は来ていない。だが用事が無い限り長く顔を見せないということは無いので、雪也はひとつ頷いた。それに嬉しそうに歯を見せながらニカッと笑って、由弦はまじまじと組紐を眺める。
「にしても、弥生は趣味良いよなぁ。俺もサクラには赤が一番似合うと思う」
華やかな色はサクラにピッタリだと笑う由弦は、さっそくとばかりに紫呉に抱かれているサクラの元へ走っていった。
「サクラ! ほら、綺麗なの貰ったぞ!」
な? 綺麗だろ? そう笑って由弦は邪魔にならないよう、苦しくないように気をつけながら組紐をサクラに付けた。サクラは紫呉の腕の中でニヤリと笑っていて、まるで〝似合うでしょ?〟と言っているみたいだ。そんなサクラの様子に由弦はまたケラケラと笑った。
どこぞの姫君が持っていそうな組紐に、使い方がまったく思い浮かばない由弦は組紐をあちこち角度を変えながら眺め、眉間に皺を寄せている。
「サクラに、と。それを付けていることが由弦の犬だという証になるから、もしもの事があっても酷い扱いはされないだろうと」
動物同士のいざこざはどうにもならないかもしれないが、人間に対してならば組紐は良い対策となるだろう。もしもサクラが逃げてしまったとしても、組紐があれば追い払うのではなくこの庵に連絡がくる可能性が高い。それに気づいた由弦はパッと顔を輝かせた。
「なるほど、そういう事か! そういうことなら、ありがたく貰っとく。今度紫呉と来るよな? その時に直接礼を言わないと」
今日は務めがあると言って弥生と優は来ていない。だが用事が無い限り長く顔を見せないということは無いので、雪也はひとつ頷いた。それに嬉しそうに歯を見せながらニカッと笑って、由弦はまじまじと組紐を眺める。
「にしても、弥生は趣味良いよなぁ。俺もサクラには赤が一番似合うと思う」
華やかな色はサクラにピッタリだと笑う由弦は、さっそくとばかりに紫呉に抱かれているサクラの元へ走っていった。
「サクラ! ほら、綺麗なの貰ったぞ!」
な? 綺麗だろ? そう笑って由弦は邪魔にならないよう、苦しくないように気をつけながら組紐をサクラに付けた。サクラは紫呉の腕の中でニヤリと笑っていて、まるで〝似合うでしょ?〟と言っているみたいだ。そんなサクラの様子に由弦はまたケラケラと笑った。
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