必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 化け物ねぇ……。
 峰藤の補佐官の屋敷を辞して宿屋に戻った紫呉は、昼間に光明から聞いた話を思い出し、酒を飲みながら開け放した障子の向こうへ視線を向けていた。部屋の中では紫呉に構うことなく弥生と優が食事を摂りながら何やら難しい話をしている。どうやら今日の収穫は上々だったみたいだ。
 頭を使うことは苦手なのだと早々に逃げた紫呉はボンヤリと夜の町を見つめた。峰藤邸や補佐官の屋敷に近いこの町で本当に化け物などいるのだろうかと疑問に思うが、光明の口調は嘘をついているそれに聞こえず、また紫呉に嘘をつく理由というのも思い当たらない。本当だというのなら、その化け物とはいったいどんなものなのだろうか? 警戒心も勿論あるが、どちらかといえば好奇心の方が上回り、紫呉は化け物についてあれこれ考えるが、さっぱりわからない。
(そもそも姿もわかんねぇからなぁ)
 ただ〝化け物〟と言うだけでは想像することも難しい。この真剣な話し合いが終わったら弥生や優に話してみようか。そうすれば紫呉にはたどり着くことのできない答えが出てくるかもしれない。そう思って盃を煽った時、ふと視界の端に影が走った。
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