必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「上手に米も炊けたね。握る時は熱かっただろうに、ありがとう」
 優しい言葉に、周は笑みを止めることが出来ない。自分でも歪な形をしていると分かっていたし、これを見たら雪也はガッカリしてしまうのではないかと不安になったりもしたが、食べられないものではない以上、捨てるわけにもいかず、かといって自分で全部食べるには量が多すぎて、結局恐る恐る雪也に差し出すことにした。
 雪也はあまり人に強くモノを言う性格ではない。釜を焦がしてしまった時ですら、声を荒げることは無かった。だから少なくとも米を炊くことは成功した今回は責められることは無いだろうと予想はついていたが、思いもよらず褒められて、周は自分の胸が高揚するのを止められない。
 優しい声で、褒めてくれた。ありがとうと言ってくれた。自分が作ったものを食べて、雪也が微笑んでいる。それが嬉しくて嬉しくて、周は今すぐにでも庵を出て「やったぁぁぁぁ」と叫びながら小躍りしたい気分だ。
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