必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 弥生が西にある峰藤の領地へ行くと言うので、当然のごとく優や紫呉も彼と共に峰藤へ向かう。その間は会いに来ることができないと、存外寂しがりやな雪也に言えば、彼はわかりましたと笑みを浮かべたけれど、やはりどこか寂しそうだった。
 雪也が連れてきた周は相変わらず雪也に引っ付き、片時も側を離れようとはしなかったけれど、周はまだまだ子供で、雪也が甘えられる存在ではないのだろう。せめて早めに帰ってこられるよう、弥生の仕事が早く終わるようにしなければと、紫呉は相棒である槍を持ちながら屋敷の柱にもたれかかっていた。
 峰藤に来て早々に峰藤領邸ではなく補佐官の屋敷に向かった弥生の考えることは、紫呉にはよくわからない。わからないが、それが駄目だとか理解しなければと思ったことはなかった。紫呉は自分という人間をよく理解している。頭を使うのは優や弥生の役目で、己は力を振るうのが役目。弥生がやろうとすることの前に立ちふさがるものを薙ぎ払うのが役目だ。
(だいたい、頭を使うと眠くなるんだよなぁ。今も眠いけど)
 春風家は近臣たちの間で縁づくりの化け物と言われるほど交友関係が広い。近臣とはいえ、まだまだ年若い弥生が峰藤の右腕である補佐官と懇意にしているのかもさっぱりわからないが、出迎えてくれた補佐官の様子を見るに、一応護衛として警戒を解くことはしないが、さほどピリピリと神経を研ぎ澄ませる必要もないだろう。
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