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「それで、水はこれくらい。お米に手のひらを乗せて、手の甲が浸るか浸らないかくらいね」
米に水を吸い込ませる為そのまま少し待って、その間におかずになるものを用意する。その工程も説明しながら見えやすいようにゆっくりと包丁を滑らせた。
米を炊き、魚を焼いたものと漬物を用意する。せっかくだからと、米は握り飯にした。
「はい、これで完成。なんとなくわかった?」
何も言わずジッと雪也の手つきを見ていた周はコクリとひとつ頷いた。周は自分の記憶を頼りに頑張っていたが、やはり所々間違っていたらしい。どうりであれほどに焦げたはずだと胸の内で小さくため息をついた。
雪也に申し訳なくて落ち込むことは止められないが、どうやら雪也は周を責める気は無いらしい。ならばこれ以上落ち込んだ姿を見せるのも雪也に気を遣わせるだけだろうと、周はなるだけいつも通りに振る舞い、雪也から握り飯を受け取った。小さくかぶりつけば、温かでどこか甘い味が口いっぱいに広がる。美味しくて、温かくて、周は胸の内から込み上げてくる何かをグッと抑え込んだ。
米に水を吸い込ませる為そのまま少し待って、その間におかずになるものを用意する。その工程も説明しながら見えやすいようにゆっくりと包丁を滑らせた。
米を炊き、魚を焼いたものと漬物を用意する。せっかくだからと、米は握り飯にした。
「はい、これで完成。なんとなくわかった?」
何も言わずジッと雪也の手つきを見ていた周はコクリとひとつ頷いた。周は自分の記憶を頼りに頑張っていたが、やはり所々間違っていたらしい。どうりであれほどに焦げたはずだと胸の内で小さくため息をついた。
雪也に申し訳なくて落ち込むことは止められないが、どうやら雪也は周を責める気は無いらしい。ならばこれ以上落ち込んだ姿を見せるのも雪也に気を遣わせるだけだろうと、周はなるだけいつも通りに振る舞い、雪也から握り飯を受け取った。小さくかぶりつけば、温かでどこか甘い味が口いっぱいに広がる。美味しくて、温かくて、周は胸の内から込み上げてくる何かをグッと抑え込んだ。
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