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周が使用人として屋敷にいた時は粟と漬物を同じ下女から渡され、それを食べていた。肉や野菜、米を口にしたのは、この庵に来てからだ。雪也の後ろをついて歩いていたので米の炊き方はわかるが、弥生が作っていたような鍋などはわからない。
せっかく良いことを考えついたと思ったのに、何にも出来ないと思い出して周は俯く。それでも、それでも何か出来ないかと諦め悪く考えて、周はとりあえず米を炊いて握り飯を作ろうと米が保管されている場所に向かった。
(確か、雪也はこうして……)
米を掬い釜の中に入れて、それから水を入れる。それから手でかき混ぜて、そして水を捨てて――。
雪也がしていた工程を思い出しながら、ひとつひとつなぞるように手を動かす。しかし慣れていない手はぎこちなくて、水を捨てる度にボロボロと米が零れ落ちていった。それでもなんとか研ぎ終えると、水を入れて釜に火をつける。どうか上手くいきますようにと祈るように、周は釜をジッと見つめ続けた。
せっかく良いことを考えついたと思ったのに、何にも出来ないと思い出して周は俯く。それでも、それでも何か出来ないかと諦め悪く考えて、周はとりあえず米を炊いて握り飯を作ろうと米が保管されている場所に向かった。
(確か、雪也はこうして……)
米を掬い釜の中に入れて、それから水を入れる。それから手でかき混ぜて、そして水を捨てて――。
雪也がしていた工程を思い出しながら、ひとつひとつなぞるように手を動かす。しかし慣れていない手はぎこちなくて、水を捨てる度にボロボロと米が零れ落ちていった。それでもなんとか研ぎ終えると、水を入れて釜に火をつける。どうか上手くいきますようにと祈るように、周は釜をジッと見つめ続けた。
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