必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 将軍に目通りできるほどの名家の子息だというのに、弥生が作る料理は非常に美味だ。鍋にされたイノシシも決して臭みがなく、米もふっくらとしている。美味しくも懐かしい味にほっこりとし、三人の話に耳を傾けながら、雪也は久しぶりに心穏やかな夕食を楽しむ。そんな雪也に、弥生は箸を止めて視線を向けた。
「それで、私たちが来れなかった間、雪也はどうしていたんだ?」
 何か珍しい事でもあったか、無いのだとしても話を聞かせてほしいという弥生に、雪也は動かしていた箸を止めてコテンと首を傾げた。
「そう、ですね……、特に物珍しいことは何も。いつものように幾人か薬を求めて来られたのでお渡しして、あぁ、その際にお礼と言って白菜を頂きました。すごく大きくて、美味しかったのですよ。それから姫宮様の嫁入り行列が来ると大賑わいになって、滅多に見ない人だかりができていましたね。それから――」
 まるで指折り数えるように、雪也は弥生たちが来なくなってからの日々をポツポツと語った。どれも代り映えのしない、日常の風景。さして面白くもないだろうと思うのに、弥生はもちろん、優や紫呉も楽しそうに聞いている。その事実に面映ゆくなりながらあれも、これもと話していれば、ふと思い出すことがあった。

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