必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「……ずいぶんと、いっぱい持ってきたのですね」
 野菜の葉がのぞく包みや米俵、そして何故か手足を縛られたイノシシ。どうやって三頭の馬で運んできたのかと心底不思議になるその量に雪也は固まるが、そんな雪也に豪快な笑いで応えて、紫呉は次々とそれらを庵の中に運び込んだ。
「私たちはともかくとして、紫呉の胃も満たさねばならんからな。仮に余ったとしてもすぐに腐るものではないのだから、雪也が食べればいい。雪也はもっと食べるべきだからな」
 また瘦せたのでは? と半目にして雪也を見る弥生に、雪也は小さく息をついて首を横に振る。
「弥生兄さままで、そんなことを言うのですね。近頃は市の者達にもやいのやいの言われているというのに」
 ちゃんと食べてます、と言って俯く雪也の姿は、まるで拗ねた子供のようだ。そんな雪也にクスリと笑って、弥生は中へ促す。
「わかったわかった。さぁ、中へ入って支度をしよう。あまり待たせると紫呉が待ちかねて生肉を食いだすぞ」
 流石の紫呉もそんなことはしないだろうと笑いつつ、弥生や優と共に庵の中へ入る。囲炉裏の方へ視線を向けた時、イノシシをまじまじと見つめている紫呉の姿に雪也はビクリと肩を震わせた。
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