必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 宣言通り弥生たちが庵に来なくなってしばらくすると、あの時弥生が言っていた姫宮の嫁入り行列が来るとの噂が広がり、見たこともないほどの長い行列が町を通り過ぎていった。
 きっとあの美しい輿に、将軍に嫁ぐ宮様が乗っているのだろう。彼女がつつがなく城に入れば、弥生も少しは休めるだろうか。
 そんなことをつらつらと考えながら、雪也は通り過ぎた行列の背中を見つめ続けた。


 華衛合体――長年相容れなかった華都と衛府の調和――の為に姫宮様を将軍の正妻に。
 そんな話が出てから随分と年月がかかったが、ようやく姫宮様が入城したことにより弥生はホッと小さく息をついた。先の将軍正妻である大御上おおみうえとの顔合わせは何やら不穏な空気であったと聞いたが、少なくとも将軍との顔合わせはつつがなく終わった。これで弥生の役目もひと段落と言って良いだろう。
 先に告げていたとはいえ、しばらく雪也の庵に行っていない。雪也は隠しているつもりなのだろうが、存外彼が寂しがり屋であることを弥生は知っている。明日あたりにでも何か美味しい菓子を持って雪也の所へ行こうか。そんなことを考えながら回廊を歩いていた弥生は、将軍の側付きに呼び止められたことで足を止めた。
「春風様、上様がお呼びでございます」
「上様が? わかった、すぐに参る」
 何かあっただろうかと内心首を傾げながら、それでも将軍からの召喚とあっては無視するわけにもいかない。弥生は踵を返し、先導する側付きの後に続いた。
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