必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 屋敷を出た雪也がまずしなければならなかったのは、どうやって金を稼ぎ食べていくかを考えることだった。当面の食料は餞別だと弥生が用意してくれたが、それもいつかは底が尽きるだろうし、わりと過保護な弥生は言えば米も食材もくれるだろうが、そんな風にずっと甘えるのもおかしな話だろう。
 さてどうしようか、と胸の内でうんうんと首を傾げながら、とりあえず庵を出てみる。
 紫蘭が美しく咲き乱れる庵は、弥生の説明によれば随分と広い庭がある。杭も何も打たれていないのでパッと見た感じはただの空き地なのだが、それも含めて雪也に貸し出された敷地であるらしい。
 人がまったく通らない場所ではないが、両隣に建物は一切ない静かな場所だ。これほど広いのならば、何かを育ててみるのも良いかもしれない。
 流石にここまで水を引いてくることは素人には難しいだろうから米を育てるという選択は無謀だろう。ならば野菜は? と考えるが、この辺りには畑も多く人々は慣れた者達から買い取っているため新参者の雪也に客が付くかは未知であり、どちらかといえば難しい。
 この辺りに商売敵が少なく、需要があり、雪也にもできること。
 そこでふと思い出したのは屋敷にいた時にずっと優が熱心に教えてくれた漢方薬だった。
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