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「いいえ。充分に良くしていただきました。不満などありません。でも、僕にはこのお屋敷にいる確固たる理由が、どうしても持てないのです。皆がこのお屋敷で寝起きし、給金を貰い、衣食足るのは、その分このお屋敷に奉公しているからです。仕事を全うすることで彼らは堂々と雨風をしのぎ、衣に腕を通し、米を食うことができます。ですが弥生兄さま、僕にその確固たる理由は、ありません」
弥生は雪也を、それこそ弟のように可愛がり、面倒を看てくれた。今までなら、己が子供であることを理由にそれも許されただろう。だが、もう雪也は大人になった。これから先歳を重ねるばかりで、子供に戻ることなど決してあり得ない。ならば、己の手で働き、それに見合うだけの衣食住を自分の手で得るべきだ。
弥生の好意に甘えてこの屋敷に居座れば、今も静かに漂う使用人たちの不満がいずれ弥生に向けられることとなる。
この屋敷に引き取られた時の雪也は人形のように表情が動かず言葉少なだった。だが恩知らずになったことは、一度もない。
弥生のことだ、屋敷に燻ぶっている不満も、それを雪也が気にしていることも既に知っているだろう。彼の右腕たる優の情報網に隙などない。
弥生は雪也を、それこそ弟のように可愛がり、面倒を看てくれた。今までなら、己が子供であることを理由にそれも許されただろう。だが、もう雪也は大人になった。これから先歳を重ねるばかりで、子供に戻ることなど決してあり得ない。ならば、己の手で働き、それに見合うだけの衣食住を自分の手で得るべきだ。
弥生の好意に甘えてこの屋敷に居座れば、今も静かに漂う使用人たちの不満がいずれ弥生に向けられることとなる。
この屋敷に引き取られた時の雪也は人形のように表情が動かず言葉少なだった。だが恩知らずになったことは、一度もない。
弥生のことだ、屋敷に燻ぶっている不満も、それを雪也が気にしていることも既に知っているだろう。彼の右腕たる優の情報網に隙などない。
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