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「陛下」
 強い眼差しでラージェンを見つめ、ルイは腰に佩いていた連隊長の剣をとると主に捧げた。
「どうか、連隊長の任を解いてください。私がアシェルをオルシアに連れて行きます」
 オルシアにアシェルを連れて行ったとして、治療にどれほどの時間がかかるかわからない。薬によっては、そのままアシェルがいなくなることも、あるいは命があるだけで二度と目覚めないこともあるだろう。命が助かったとしても、その治療に何十年とかかるかもわからない。休暇が溜まりに溜まっているとはいえ、流石に何十年と休むだけの日数もなければ、連隊長として許されることでもない。
「ロランヴィエル公、あなたがそこまでする必要は無いのですよ? 確かにお兄さまをオルシアにお連れする方が早いのでしょうけれど、私が一緒に行っても良いんですもの。アルフレッド王も、シェリダン妃も話のわかるお方ですから、療養をお願いすることもできますし、私の信頼する侍従や侍女に任せることもできますわ」
「それに、国としてもルイを解任することはできないね。大臣も貴族も、誰も納得しない」
 ルイはアシェルに見合うため、アシェルと結ばれるためにここまで上り詰めたのだろうが、既にルイはただ国最高の公爵というだけではない。ルイが連隊長を辞めたとなれば疑念はラージェンに向かい、国の安寧を乱す元となるだろう。そもそも、実力は当然あるが気位も高い第一連隊の兵士たちを問題なく統率できる者などそうそういない。後任など見つからないだろう。
 アシェルは貴族だが、もはや文官でもなく領地を持つ貴族の当主ではない。アシェルを切り捨てよとは言えないが、だからといってアシェルの為にルイを今の位置から動かすことはできない。ラージェンは国の王で、フィアナは王妃。アシェルの家族だけではいられない。
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