ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)

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「〝フィアナを守ってほしい〟その願い通りにアシェルは動いた。母がいないことなど感じさせないほどにフィアナの面倒をみて、甘やかし、時に𠮟りつけ、舞踏会にも茶会にも付き添った。あれはそういったことが苦手であったのに。その結果、あの子は片目の光と足の自由を失ってしまった」
 これを呪いと言わず、なんと言うのだろうか。
 アシェルにとて人生がある。自らを幸せにする人生だ。だが結果はどうだろう。人生の大半をフィアナに捧げ、多くを諦め、捨てて。
 ウィリアムもジーノも、フィアナすら己の人生を己の為に使っている。それぞれの願いのままに生き、それぞれの幸せを掴んで。だがアシェルの人生の中で、アシェル自身のために使われた時間は、どれほどあったのだろうか。
「可哀想な子だ。みな等しく私とミシェルの子であるというのに、アシェル一人に犠牲を強いてしまった」
 まるで兄妹のためにその生があるかのように。
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