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「アシェル。可愛いアシェル。これだけは約束するわ。この先どんなことがあっても、フィアナはあなたの一番の味方になってくれる。どれほど周りがあなたを否定したとしても、フィアナだけはあなたの味方よ。だからどうか、あなたもフィアナの味方になって、あげて、ね……」
 柔らかに微笑んで話していた母の顔色が徐々に悪くなっていくのに気づいて、アシェルはハッと窓の外を見た。いつの間にか灰色の雲が空を覆っていて、今にも大粒の雫が落ちてきそうで、アシェルは慌てて立ち上がる。
「お母さま、お話は今度聞きます。今はどうかお休みください。フィアナは僕が部屋に連れていきますから」
 どうぞ横になってくださいとアシェルが手を伸ばした時、頭痛がするのだろう、苦痛に顔を歪めた母がアシェルの手を掴んだ。そのあまりに強い力が母の胸の内を表しているようで、アシェルは手を振り払うことも声を出すこともできない。
「アシェ、ル……、わたしの、アシェル。どうかお願いよ……」
 あの優しく穏やかで、でも確かに己を守ってくれた母がアシェルに縋るような視線を向ける。
「アシェル……、ねぇ、アシェル。お母さまのお願い、聞いてくれるわよね?」
 どうか、どうか、と願う母に、アシェルは言葉もなく頷く。その姿に母はホッ、と力なく微笑んだ。
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