ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)

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「連隊長、ベリエル殿がいらっしゃっています」
 執務室で書類を捌いていたルイは、兵の声に顔を上げた。ルイ付きの執事であるべリエルがわざわざ来るとは何事だろう。チラと窓の外を見て目を細めたルイは、入室の許可を短く告げた。静かに扉が開き、隙なく執事服を纏ったべリエルが礼をする。
「失礼いたします。弟よりの報せをお伝えするために参りました」
 べリエルの弟はアシェルに付いているエリクだ。嫌な予感に、ルイは差し出された小さな紙片を焦るように受け取る。素早く視線を滑らせて、クシャリと握りつぶした。
「すぐに戻る。ベリエルは先に戻って手筈通りに」
「承知いたしました。では、失礼を」
 兄弟そろって優秀な彼らは、細かく指示を出さずともルイの思い通りに動いてくれる。ならば屋敷の事は何も案じる必要はないと己に言い聞かせて、ルイは手早く書類を片付けると副連隊長を呼んで後を任せ、屋敷へと馬を走らせた。
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