164 / 273
164
しおりを挟む
人々の声はとても煩わしいだろう。人々の視線は無遠慮で腹立たしいだろう。だがそれを恐れて閉じこもっては勿体ないではないか。
「見せつけてやればいいよ。お前たちが蔑んだ悪魔は、こんなにも立派で素敵な紳士なのだと。そうすれば、すべてはあなたの手の中だよ」
優しい微笑みを浮かべてそう言い切るアシェルに、ルイはこれ以上ないほど目を見開いた。それはルイには思いつかないような考えで、しかもアシェルは何一つ疑うことなく確信を持っているようだった。
髪も瞳も、隠すことなく過ごせる世界。母が儚くなった瞬間に消えたと思った、誰かに愛される世界。幸せに、なれる世界。
「公爵に?」
真っ暗闇だった世界がキラキラと輝き、ルイの目にアシェルは女神のように見えた。アシェルの言う〝公爵〟になれたら、そうしたら二度と悪魔などと言われず、嗤われない世界に生きることができるのか。その確かな希望を瞳に宿したルイに、アシェルはひとつ頷いた。
「そう、素敵な公爵に。大きな力を持つ、とても偉い公爵に」
立派な公爵様に、と言った同じ口調で告げられたそれに、ピクリとルイの指が跳ねる。
「……力?」
「見せつけてやればいいよ。お前たちが蔑んだ悪魔は、こんなにも立派で素敵な紳士なのだと。そうすれば、すべてはあなたの手の中だよ」
優しい微笑みを浮かべてそう言い切るアシェルに、ルイはこれ以上ないほど目を見開いた。それはルイには思いつかないような考えで、しかもアシェルは何一つ疑うことなく確信を持っているようだった。
髪も瞳も、隠すことなく過ごせる世界。母が儚くなった瞬間に消えたと思った、誰かに愛される世界。幸せに、なれる世界。
「公爵に?」
真っ暗闇だった世界がキラキラと輝き、ルイの目にアシェルは女神のように見えた。アシェルの言う〝公爵〟になれたら、そうしたら二度と悪魔などと言われず、嗤われない世界に生きることができるのか。その確かな希望を瞳に宿したルイに、アシェルはひとつ頷いた。
「そう、素敵な公爵に。大きな力を持つ、とても偉い公爵に」
立派な公爵様に、と言った同じ口調で告げられたそれに、ピクリとルイの指が跳ねる。
「……力?」
452
お気に入りに追加
1,048
あなたにおすすめの小説
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
悪役令息の死ぬ前に
ゆるり
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
どうして卒業夜会で婚約破棄をしようと思ったのか
中屋沙鳥
BL
「カトラリー王国第一王子、アドルフ・カトラリーの名において、宣言する!本日をもって、サミュエル・ディッシュウェア公爵令息との婚約を破棄する。そして、リリアン・シュガーポット男爵令嬢と婚約する!」卒業夜会で金髪の王子はピンクブロンドの令嬢を腕にまとわりつかせながらそう叫んだ。舞台の下には銀髪の美青年。なぜ卒業夜会で婚約破棄を!そしてなぜ! その日、会場の皆の心は一つになった/男性も妊娠出産できる前提ですが、作中に描写はありません。
運命の番なのに別れちゃったんですか?
雷尾
BL
いくら運命の番でも、相手に恋人やパートナーがいる人を奪うのは違うんじゃないですかね。と言う話。
途中美形の方がそうじゃなくなりますが、また美形に戻りますのでご容赦ください。
最後まで頑張って読んでもらえたら、それなりに救いはある話だと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる