ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)

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「……怖く、ないの?」
 この髪が、瞳が、まるで悪魔のようだと言わないのか? ルイの存在を知っていたのなら、悪魔と言われ忌み嫌われていることも知っているだろうに。なのに、アシェルはキョトンとしながら首を傾げるのだ。心底不思議だとでも言うように。
「何が?」
「……髪と、目が……」
 そこまで言ってようやく、あぁ、とアシェルは納得したように頷いた。そしてうーん、と少しだけ悩んで、やはりコテンと首を傾げる。
「特に何とも思わないけど……。だって、この国に自分と違う髪色や瞳の色なんて数えきれないほどあるよ? たまたま僕とフィアナは同じような髪色をしているけど、お父さまも、おじいさまやおばあさまも違う色だよ? 髪も、瞳も、親子兄妹であっても同じではないし、まったく違う色もある。僕がたまたま茶色い髪に金色の目をしているだけで、あなたもたまたま黒い髪に赤い瞳をしているだけなんだよ」
 ただその色で生まれた。それだけだと言い切ったアシェルにルイは呆然とする。何も返せないルイを見て、やはり悪魔の噂は知っているのだろう、アシェルはどこか悲し気に微笑んでフード越しにルイの頭を撫でた。
「あなたがどんな髪色で生まれようと、どんな瞳を持っていようと些細なことだよ。ただ色がそうだったというだけ。でも、何かを言われたら傷つくよね。何にも思わないなんてこと、無いよね。あなたの心を傷つけて、隠す必要のない髪と瞳を隠すようにさせてしまったのは、大人の罪だよ」
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