141 / 331
141
しおりを挟む
アシェルがフィアナを大切に思うように、フィアナもまたアシェルの幸せを考えてくれていることは疑っていない。疑っていないからこそ、どうしてフィアナがアシェルの結婚に拘るのか、未だに不思議だった。元々同性同士の結婚は国王の許可が必要なのだ。ルイが望んだからといっても、ラージェンが許可をしなければ叶うはずもない。ノーウォルトの斜陽は誰の目にも明らかで、アシェルも結婚する気などまったくなかった。損得を考えるのならば、この結婚が必ずしもノーウォルトやフィアナに得をもたらすとも思えず、むしろ不利益を被るかもしれないし、アシェルが幸せになる保証などもない。最高位の貴族と揉め事を起こすことなく、アシェルの幸せも考えるのなら、アシェルが自らの金で田舎に引っ越すのが最善であったはず。だがフィアナは頑ななまでにそれを拒み、策を練って王妃の命令さえも出して強固にこの結婚を推し進めた。何が妹をそうさせるのか、誰よりもわかっていると思っていた妹の考えることが、ルイが絡むと途端にわからなくなってしまう。
(そんなに心配しなくても、僕が不幸になるなんてことはあり得ないのに)
それは決して覆ることのない確信であったが、理由を言うわけにもいかないので胸の内に仕舞いこむ。もう二度と、フィアナを地獄に突き落としてはいけない。前回は間に合ったが、今回はアシェルが目を塞いでやることはできないのだから。
(あぁ、でも、今回は陛下が側にいてくださるから大丈夫か)
フィアナのいる城からは少しであったとしても距離があるし、ラージェンはフィアナを大事にしてくれている。きっと独りになんてしないで、抱きしめてくれるだろう。
大丈夫、何も心配することはない。もう、大丈夫。
(そんなに心配しなくても、僕が不幸になるなんてことはあり得ないのに)
それは決して覆ることのない確信であったが、理由を言うわけにもいかないので胸の内に仕舞いこむ。もう二度と、フィアナを地獄に突き落としてはいけない。前回は間に合ったが、今回はアシェルが目を塞いでやることはできないのだから。
(あぁ、でも、今回は陛下が側にいてくださるから大丈夫か)
フィアナのいる城からは少しであったとしても距離があるし、ラージェンはフィアナを大事にしてくれている。きっと独りになんてしないで、抱きしめてくれるだろう。
大丈夫、何も心配することはない。もう、大丈夫。
490
お気に入りに追加
1,462
あなたにおすすめの小説
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です
捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
勘違いの婚約破棄ってあるんだな・・・
相沢京
BL
男性しかいない異世界で、伯爵令息のロイドは婚約者がいながら真実の愛を見つける。そして間もなく婚約破棄を宣言するが・・・
「婚約破棄…ですか?というか、あなた誰ですか?」
「…は?」
ありがちな話ですが、興味があればよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる