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 アシェルがフィアナを大切に思うように、フィアナもまたアシェルの幸せを考えてくれていることは疑っていない。疑っていないからこそ、どうしてフィアナがアシェルの結婚に拘るのか、未だに不思議だった。元々同性同士の結婚は国王の許可が必要なのだ。ルイが望んだからといっても、ラージェンが許可をしなければ叶うはずもない。ノーウォルトの斜陽は誰の目にも明らかで、アシェルも結婚する気などまったくなかった。損得を考えるのならば、この結婚が必ずしもノーウォルトやフィアナに得をもたらすとも思えず、むしろ不利益を被るかもしれないし、アシェルが幸せになる保証などもない。最高位の貴族と揉め事を起こすことなく、アシェルの幸せも考えるのなら、アシェルが自らの金で田舎に引っ越すのが最善であったはず。だがフィアナは頑ななまでにそれを拒み、策を練って王妃の命令さえも出して強固にこの結婚を推し進めた。何が妹をそうさせるのか、誰よりもわかっていると思っていた妹の考えることが、ルイが絡むと途端にわからなくなってしまう。
(そんなに心配しなくても、僕が不幸になるなんてことはあり得ないのに)
 それは決して覆ることのない確信であったが、理由を言うわけにもいかないので胸の内に仕舞いこむ。もう二度と、フィアナを地獄に突き落としてはいけない。前回は間に合ったが、今回はアシェルが目を塞いでやることはできないのだから。
(あぁ、でも、今回は陛下が側にいてくださるから大丈夫か)
 フィアナのいる城からは少しであったとしても距離があるし、ラージェンはフィアナを大事にしてくれている。きっと独りになんてしないで、抱きしめてくれるだろう。
 大丈夫、何も心配することはない。もう、大丈夫。
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