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「良い香りだ。相変わらず趣味が良いね」
ラージェンの言葉に、ルイは紅茶に造詣が深いのだろうか? とアシェルは胸の内で首を傾げる。見目や仕草、あるいは軍功でキャァキャァと女性に黄色い悲鳴をあげられていることばかりが噂になり、社交界にあまり出ないこともあってルイという男は少々謎めいた存在だ。幼少期の話も、休日に何をしているのかも、趣味嗜好も、個人的な事はほとんど知られていない。アシェルも何故か自分に執着を見せて甘やかす以外のルイを何も知らなかった。
(紅茶、好きなのか?)
ボンヤリとそんなことを考えていた自分にふと気が付いて、アシェルは紅茶を飲むふりをしてため息をついた。そんなこと、知って何になるのだろう。
「陛下のお口にあったのなら、サクナウロから取り寄せた甲斐があるというものですね」
ラージェンと和やかに会話をしながら、ルイはテーブルの下でアシェルの手をそっと握ってきた。ポンポンと宥めるように優しく撫でられてアシェルは瞬く。意味の分からないそれに手を退けようと思うのに、どうしてか離れがたくて頭とは裏腹に身体はピクリとも動かなかった。それどころか思考がボンヤリとしてきて、どこか宙に浮いたような気持になる。だがそんなアシェルの様子は各々話に花を咲かせている皆の目には普通に見えたのか、特に何を言われることも無かった。すぐ近くにいるはずなのに、どこか遠くでメリッサがはしゃぐ声が聞こえてくる。
ラージェンの言葉に、ルイは紅茶に造詣が深いのだろうか? とアシェルは胸の内で首を傾げる。見目や仕草、あるいは軍功でキャァキャァと女性に黄色い悲鳴をあげられていることばかりが噂になり、社交界にあまり出ないこともあってルイという男は少々謎めいた存在だ。幼少期の話も、休日に何をしているのかも、趣味嗜好も、個人的な事はほとんど知られていない。アシェルも何故か自分に執着を見せて甘やかす以外のルイを何も知らなかった。
(紅茶、好きなのか?)
ボンヤリとそんなことを考えていた自分にふと気が付いて、アシェルは紅茶を飲むふりをしてため息をついた。そんなこと、知って何になるのだろう。
「陛下のお口にあったのなら、サクナウロから取り寄せた甲斐があるというものですね」
ラージェンと和やかに会話をしながら、ルイはテーブルの下でアシェルの手をそっと握ってきた。ポンポンと宥めるように優しく撫でられてアシェルは瞬く。意味の分からないそれに手を退けようと思うのに、どうしてか離れがたくて頭とは裏腹に身体はピクリとも動かなかった。それどころか思考がボンヤリとしてきて、どこか宙に浮いたような気持になる。だがそんなアシェルの様子は各々話に花を咲かせている皆の目には普通に見えたのか、特に何を言われることも無かった。すぐ近くにいるはずなのに、どこか遠くでメリッサがはしゃぐ声が聞こえてくる。
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