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「ようこそ、ノーウォルト卿、夫人。どうぞ今日は楽しんでください」
 余計なことは言わぬがマナー。それが主催者ならば尚更に。貴族らしい考えのままにルイが笑みを浮かべた時、見上げるほど大きな扉が執事の手によって左右に開かれた。
「国王陛下、王妃殿下の御到着ー!」
 扉の横で執事が王夫婦の到着を高らかに告げる。美しく装ったフィアナをエスコートするラージェンの姿が見えて、皆が一斉に頭を垂れた。
「あぁ、今日は身内の顔合わせだからね。そう気を遣う必要もないから皆も顔を上げてくれ」
 こうして公爵邸を訪れるのも久しぶりだ、と笑うラージェンの前に進み、ルイは差し出されたフィアナの手に口づけるフリをして挨拶をした。
「アシェルお兄さまは今日、髪を結っていらっしゃるのね。とても素敵ですわ。これはロランヴィエル公がなさったの?」
 いつも適当に髪を結ぶか、あるいは簡単に櫛を通して背に流すことしかしないアシェルの今日の姿に、フィアナは瞳を輝かせて近づいた。
「ええ、僭越ながら私が」
 派手過ぎず、女性っぽくなく、しかし一目で凝っているとわかる美しい結い方に何を感じたのか、フィアナは開いた扇で口元を隠しながら「ふふふふ」と嬉しそうに笑った。
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