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「良い時間ですから朝の薬湯を飲みましょう。小雨だったようですが、雨で足の傷が疼いて夢見が悪かったのかもしれません」
窓の外の様子を見るに雨は夜中の一瞬であったのだろう。既に常と変わらない温かな日差しが差し込んでいて、アシェルは目を細めた。
「主治医に頼んで、あまり苦くないように改良してもらったんですよ。痛みも治まりますから、さぁ」
まるで苦い薬を前にぐずる子供を宥めるかのような優しい声音に眉根を寄せて、アシェルはムッとすると薬湯の器を受け取り、勢いよく呷った。
「ね? そんなに苦くなかったでしょう?」
飲み終えた薬湯の器を取って寝台に置きながらニコニコと笑っているルイにアシェルは口を閉ざしたまま、フイと顔を背けた。どうにもすべてにイライラと胸がざわついてしかたがない。しかしルイはそんなアシェルの様子に苛立つこともないのか、相変わらずニコニコと微笑みながらアシェルの足を優しく撫でさすっている。
窓の外の様子を見るに雨は夜中の一瞬であったのだろう。既に常と変わらない温かな日差しが差し込んでいて、アシェルは目を細めた。
「主治医に頼んで、あまり苦くないように改良してもらったんですよ。痛みも治まりますから、さぁ」
まるで苦い薬を前にぐずる子供を宥めるかのような優しい声音に眉根を寄せて、アシェルはムッとすると薬湯の器を受け取り、勢いよく呷った。
「ね? そんなに苦くなかったでしょう?」
飲み終えた薬湯の器を取って寝台に置きながらニコニコと笑っているルイにアシェルは口を閉ざしたまま、フイと顔を背けた。どうにもすべてにイライラと胸がざわついてしかたがない。しかしルイはそんなアシェルの様子に苛立つこともないのか、相変わらずニコニコと微笑みながらアシェルの足を優しく撫でさすっている。
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