ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)

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「後ほど侍従長に陛下と王妃殿下のご予定をお聞きしますね。ジーノ殿も都合の悪い日を後ほどロランヴィエルに報せてください。日時が決まれば我が家から正式に招待状を送りましょう。当日のおもてなしもお任せを。礼装ではなく普段の装いでと明記していれば、そう気を遣うこともないでしょうし、これでノーウォルト夫人もご満足されるかと」
 確かに、すべてに目を瞑り、ロランヴィエルから招待されたとなればメリッサの自尊心は大いに満たされ、何の文句もないだろう。スキップする勢いでロランヴィエル邸にやって来るメリッサの姿が見えるようだ。
「ルイに任せていれば何の問題もないだろう。私とフィアナの予定はすぐに君に報せるよう侍従長に言っておくよ。ジーノもそれで良いかい?」
「はい。兄夫婦にもソワイルにも配慮いただき、公爵様にはなんとお礼をすればよいか……」
 身分は遥か上であるルイだが、随分と年下の彼に顔合わせの茶会を強請るような実家の恥を見せたばかりか、その対応のすべてを丸投げしてしまい、恥ずかしさと申し訳なさでジーノは縮こまりながら頭を下げる。そんな彼にルイは小さく笑ってグラスを手に取った。
「アシェル殿と結婚するのですから、これくらいは当然のこと。顔合わせは結婚式が終わってからと思っていましたが、それが少し早まったとしても問題はありません。ただ、念押しさせていただきますが、終わりの時間は厳守でお願いします」
 ラージェンとフィアナもそうであるが、公爵であり連隊長でもあるルイも多忙だ。おそらくはこの茶会の為に無い時間をこじ空けるのだろうことを思うと、やはりアシェルもジーノ同様、瞼を伏せて恥じ入るしかない。
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