ありあまるほどの、幸せを

十時(如月皐)

文字の大きさ
上 下
89 / 350

89

しおりを挟む
「私も何度か見直したけど、ノーウォルトではないみたいだ」
 ジーノは懐から開封済みの手紙を差し出す。そこにはアシェルがもつ手紙と同様に、開催場所はノーウォルトではなく、ジーノのソワイル侯爵邸か、今いるロランヴィエル公爵邸で行いたいとあった。メリッサとしてはジーノかアシェルが主催したお茶会にノーウォルトは兄弟としてお呼ばれした、という形を取りたいのだろう。お茶会を催すのであれば自らの屋敷か別邸に招いてもてなすのが常識で、今のノーウォルトにはそのような余裕など無いのだから。
「おそらくソワイルとしても、カロリーヌとしても、陛下やロランヴィエル公爵と交友を深めるのは賛成だろう。けれど、兄上や義姉上も参加となると難色を示すと思う。式典の時にフィアナが兄上や義姉上に必要以上の言葉を許さなかったことが、カロリーヌには気になったようだ。陛下はともかくとして、もしやロランヴィエル公爵は性格的に兄上や義姉上と合わないのでは、とね」
 ロランヴィエルは数ある貴族の中でも王に一番近いと言っても過言ではない上位貴族だ。公爵と繋がりを持ちたい貴族は数多く、ソワイルも例外ではないのだろう。侯爵たるノーウォルトでさえ、ルイが望まなければ婚姻関係を打診することも許されなかった。茶会に参加するのが国王とロランヴィエル公爵とあっては、何を差し置いても参加したいところだろう。だが、同時に何か問題が起きてロランヴィエルがノーウォルトを見放してしまえば、親族関係にあるというだけでソワイル侯爵にも害が及ぶかもしれない。茶会の主催などすればなおさらだ。かといってアシェルがロランヴィエルの屋敷で茶会をしたいと提案するなど、現状を考えれば何とも不自然でルイが不信を抱くのは必定。どの道を選ぼうとも危険な橋だと頭を抱えるカロリーヌが目に見えるかのようだ。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。

水鳴諒
BL
 目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

愛する人

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」 応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。 三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。 『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

捨てられオメガの幸せは

ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。 幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。

処理中です...