74 / 261
74
しおりを挟む
「あ、あの、ロランヴィエル公爵様。ダンスに誘っていただけませんか?」
せっかくだからゼリーも、と差し出されたそれの甘さに至福の時間を味わっていた時、正面からそんな声が聞こえてアシェルは顔を上げた。そこには美しくも可愛らしい、フリルとリボンで飾られた桃色のドレスを身にまとった年若い女性が、ほんのりと赤く染まる頬を扇で隠しながら上目遣いにルイを見ていた。
妙齢の女性はルイに憧れ恋心を抱いていても、王が婚姻の許可を出したその日に「誘ってほしい」とは流石に言えないのか、遠巻きに視線を向けては〝誘ってくれないか〟と無言で期待することしかできないが、年若い彼女は良くも悪くも素直なのだろう。「誘ってほしい」なんてまかり間違っても言われたことのないアシェルは一応自分の婚約者が目の前で誘われているというのに、当然のことながら嫉妬することも悋気を覚えることもなく〝うわ~、こんな場面初めて見た。本当にこんなことってあるんだ。こんな可愛い子に言われるなんて、流石はロランヴィエル公だな。しかし、これができる若さってすごいよな~〟と、どこぞの野次馬のような感想を胸の内で抱きながら、ちょっとワクワクしつつ自然を装って視線を向けた。
せっかくだからゼリーも、と差し出されたそれの甘さに至福の時間を味わっていた時、正面からそんな声が聞こえてアシェルは顔を上げた。そこには美しくも可愛らしい、フリルとリボンで飾られた桃色のドレスを身にまとった年若い女性が、ほんのりと赤く染まる頬を扇で隠しながら上目遣いにルイを見ていた。
妙齢の女性はルイに憧れ恋心を抱いていても、王が婚姻の許可を出したその日に「誘ってほしい」とは流石に言えないのか、遠巻きに視線を向けては〝誘ってくれないか〟と無言で期待することしかできないが、年若い彼女は良くも悪くも素直なのだろう。「誘ってほしい」なんてまかり間違っても言われたことのないアシェルは一応自分の婚約者が目の前で誘われているというのに、当然のことながら嫉妬することも悋気を覚えることもなく〝うわ~、こんな場面初めて見た。本当にこんなことってあるんだ。こんな可愛い子に言われるなんて、流石はロランヴィエル公だな。しかし、これができる若さってすごいよな~〟と、どこぞの野次馬のような感想を胸の内で抱きながら、ちょっとワクワクしつつ自然を装って視線を向けた。
443
お気に入りに追加
1,030
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
なぜか第三王子と結婚することになりました
鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!?
こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。
金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です
ハッピーエンドにするつもり
長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる