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「あ、あの、ロランヴィエル公爵様。ダンスに誘っていただけませんか?」
 せっかくだからゼリーも、と差し出されたそれの甘さに至福の時間を味わっていた時、正面からそんな声が聞こえてアシェルは顔を上げた。そこには美しくも可愛らしい、フリルとリボンで飾られた桃色のドレスを身にまとった年若い女性が、ほんのりと赤く染まる頬を扇で隠しながら上目遣いにルイを見ていた。
 妙齢の女性はルイに憧れ恋心を抱いていても、王が婚姻の許可を出したその日に「誘ってほしい」とは流石に言えないのか、遠巻きに視線を向けては〝誘ってくれないか〟と無言で期待することしかできないが、年若い彼女は良くも悪くも素直なのだろう。「誘ってほしい」なんてまかり間違っても言われたことのないアシェルは一応自分の婚約者が目の前で誘われているというのに、当然のことながら嫉妬することも悋気を覚えることもなく〝うわ~、こんな場面初めて見た。本当にこんなことってあるんだ。こんな可愛い子に言われるなんて、流石はロランヴィエル公だな。しかし、これができる若さってすごいよな~〟と、どこぞの野次馬のような感想を胸の内で抱きながら、ちょっとワクワクしつつ自然を装って視線を向けた。
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