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「心配していただけるのはありがたいですが、あなたを置いてこの場を離れるわけがないでしょう? 帰るならあなたと一緒に帰りますよ」
 顔が赤いのは気にしないでください。これは病ではあるかもしれませんが害のあるものではありませんから。なんて生真面目な顔をしながら言うルイにアシェルはますます首を傾げる。彼はいったい何を言っているんだ?
「さぁ、もうこの話は止めにしましょう。オレンジはどうですか?」
 これ以上は突っ込んでくれるなとばかりにルイはわざとらしく笑みを浮かべ、アシェルの口元にオレンジを近づける。結局ルイが何を言っていたのかと疑問は残るが、差し出されたオレンジの艶やかさに負けて、アシェルは何を言うでもなく口を開いてオレンジをパクついた。
 随分と久しぶりに食べた、その瑞々しく甘いオレンジにアシェルの頬は緩み、幸せに浸って周りの騒めきも、フィアナのニヤニヤした笑みにも気づかない。目立ちたくないと願っていたというのに、思いっきり目立ってしまっているなど知る由もなく、アシェルは雛鳥のごとく差し出されるケーキやフルーツを口に含んだ。
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